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ファンタジーは突然に1234

ミクルちゃんが抱えて来てくれた自分の服を着てから
ハンカチで犬の右足をテーピングし、このワンコを警察に届けようと移動を開始する事にした

その間、終始ミクルちゃんは『すごい、すごい』を連呼してオレを称えてくれていた

正直、寒中水泳を敢行したせいで身体がかじかんでいたが
この娘にこれだけ称えてもらえるのなら、この程度って気持ちになってくる

派出所までもう少しというところで

『ラッキー! ああ…アナタ方がラッキーを保護してくれたんですね! ラッキー…無事でよかった…』

どうやら、このワンコの飼い主さんのようだ
この寒い時期なのに汗を大量にかいていて
どれだけ熱心に探していたのかと、このワンコがどれだけ愛されているのかが伺えた

『この子の飼い主さんですね。たまたま僕たちがこの子を見つけて警察に届けるところでした』

言ってワンコを飼い主さんに差し出す
飼い主さんはワンコを抱きとめてから頭を軽く撫でて

『本当に、ありがとうございます』

深く頭を下げてお辞儀をし、ワンコに頬擦りをしようとして右足のハンカチに目を留めて

『ラッキー、右足を怪我してたんですね。それにちょっと身体が濡れてる』

『その子、右足を怪我して川で溺れてたんです
それで、お兄ちゃんが泳いで助けて上げたんです』

『そんな事になってたんですか!?
私、この子を乗せて車を運転していたんですけど
この子を後部座席に乗せて、窓を開けてたんです
この子、窓から顔を出すのが好きで、窓を開けないと怒るんです
でも、ふと気付いたらこの子が居なくなっていて
たぶん、橋を通ってる途中で窓から落ちて右足を怪我しながら更に川に落ちたんですね』

なるほど、そういう事だったのか
しかし、窓から飛び出したら足を怪我して更に川に落ちて溺れるという
不運の大連鎖をしたワンコの名前がラッキーとは、皮肉が利いてる

『でも、何はともあれ、大事に至らなくて良かったですね』

『ええ、お二人のお陰です』

飼い主さんが朗らかに笑って答える、そこで

『お兄ちゃんのラトルミレショニーがイクトデシブしたからその子を助けれたんですよ
私はただエナジーウェーブを間接転送しただけで何もしてないですよ
全部お兄ちゃんの力です』

ミクルちゃんの電波が炸裂する
どうも興奮状態が続いた為にオレのでっち上げたイニシエーションという決まり事をを忘れてしまったらしい

飼い主さんの笑顔がどんどん曇っていき、怪訝そうな顔になる
しかし、何とか笑顔をもう一度作って

『な…何かお礼をしないといけませんわ』

何とか言葉を紡いでいく、しかし

『その子はチャイファーのウルトアクティを私に送ってくれたからもうお礼は頂いています』

必死の抵抗を阻むように放射される電波
飼い主さんの顔が見る見る青くなっていく

たぶん、ここでオレが方向修正しないと行けない場面なんだろうけど…今のオレは

『そういう訳で、もう、お礼は要りません。それに、オレたちは世界を救う為にやっただけですから』

ミクルちゃんの世界を肯定する
彼女の世界が悲しい過去を乗り越える為のモノだと知ったのだから

そりゃ、いつかは『世界』を見つめ直さなきゃいけなくなるだろう
このままでは通用しない
でも、今はまだ支えてやる奴が必要なんだ
それはオレであるべきはずだ
だってオレはミクルちゃんのお兄ちゃんなんだから

飼い主さんはパクパクと口を動かして止まってしまう
それを横目にミクルちゃんの手を取る

『さぁ、行こうか、ミクル』

『うん、お兄ちゃん』

ニッコリと笑いあって出発する
もう飼い主さんから声が掛かる事は無かった

今日のこの事でオレも電波野郎として噂されるかもしれないが
この娘とお揃いなら悪くない

『まずは古着屋の方にもう一度 向かおうか』

『うん、素敵なのがあったらベミラサイがカスティアクニになるかもだしね』

滑るように流れる電波
その意味はやっぱり分からないが、今は笑って隣に居られる
これからこの調子でダダ漏れの電波にまみれてすごす事になれば色々と問題も起こるだろう
でも、おいおい慣れて行くさ
死別という悲しい過去と戦っている彼女を支えると決めたんだから

幾ばく(いくばく)か歩いたところでミクルちゃんの手が離れた
どうしたんだろう? また何か見つけたんだろうか?

『どうした、ミクル?』

問いかけにミクルちゃんは神妙な顔をし

『いま、お兄ちゃんの存在力が他に移ったわ
もうアナタはただの器に戻った
だからこれ以上アナタと話す事は無いわ』

まさかの変化球で返してきた

『はぁ!?』

困惑するオレを尻目に

『さぁ、早く次のお兄ちゃんの存在力が宿った器を探さなきゃ
じゃないと一億年と二千年前に遥かアンドロメダの彼方で
私を庇って目の前で命を散らせたランティス=スターロ=メディライ=アクネバルタの
その行為が無為になってしまう
そんな事になったらガイト=キンバネス=クエルト=サリバンも悲しむわ
だから私は世界を救うの』

トルネード投法も真っ青な鋭利な変化球でKマークを重ねる

ちょっと待て、目の前で亡くなったのが一億と二千年前とかアンドロメダの彼方って
それって、『その話そのものが既に電波だった』って事か?!

『じゃあ、さようなら一つ前のお兄ちゃんの器さん
ただの一般人になったアナタと会う事はもうないと思うけどね』

そのままスタスタと離れていく
もうオレには何の興味も無いと言わんばかりに一度も振り返ることなくその姿は遠くなっていった
後にはポツンと残されたオレだけが寒空の景色に取り残されていた

しばしその場で放心していたが、徐々に笑いが込み上げてくる
オレはずっと彼女を制御していたつもりだったが
はじめから彼女はオレの手の外に居たんだ
というか、そもそもの前提からして間違っていたんだ

『ハハ…ファンタジーは所詮、夢だからファンタジーなわけで
現実として続いたらそれはノンフィクションっていう日常的でいつでも見れるつまらないモノになるってこった
ま、極上のファンタジーが突然降って来て突然消えただけだな
なんともファンタジーっぽい終わり方じゃねぇか』

寒空の中でオレの空しい叫びが木霊する

あ〜…しっかし、これで失恋回数108回かよ…煩悩の数かってんだ
それとも何か?
この108回で全ての厄が落ちたって事なのか?
ハッ、最後の厄はデカ過ぎだったなオイ!

END

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